イラク チグリスに浮かぶ平和

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登場人物紹介

アリ・サクバンとその家族

アリ・サクバンは1972年バグダッド生まれる。5人兄弟の4男。ほかに5人姉妹。兄2人はイラン・イラク戦争に徴兵後、87年に死亡している(叔父2人も同戦争で死亡)。
アリ・サクバンが高校を卒業した90年、イラク軍に徴兵直後にクウェート侵攻部隊に入隊させられたが、クウェート領内で自ら戦線離脱した。その後も徴兵拒否を繰り返す。
03年4月に自宅を米軍に空爆され、3人の子どもたちのシャハッド(当時5歳)、ザイナブ(当時3歳)、ライス(当時7歳)を失う。
04年以降、アリ・サクバンは一時期タクシードライバーとして働いたが、05年から弟ラエードの八百屋を手伝う。弟からプレゼントされた屋台を自ら出して、ケバブやひよこ豆の煮物を売っていた。
イラクが宗派抗争・内戦状態に陥った06年4月、アリの弟ラエードは八百屋の前で車に乗った男たちから銃撃され、5発の銃弾を浴びて死亡(享年31)。アリもそのとき近くにいたが、奇跡的に無傷だった。アリは、その後も同じ通りで屋台を出して生活していた。

アリ・サクバンは、1995年に妹の紹介でロシャと結婚。翌年に長女ゴフランが誕生する。ゴフランは、03年の空爆被害から唯一生き残ったアリの子ども。2004年に次女ファティマが生まれる。「亡くなった娘のシャハッドに似ている」とアリは話していた。長男ユセフは2009年に誕生した。
アリの両親は、父サクバン・サベル(81歳=13年撮影当時)。母ナジュワ・ジュナム(73歳=同)。アリの父は、以前は建築業やレストランなどを経営。イランとの戦争で徴兵中に死亡した息子2人の遺族年金で生活している。


その他の登場人物

2003年4月9日の米軍バグダッド市内制圧。イラク戦争のニュースで、この10年間必ず流されてきた映像が、当時のフセイン大統領の銅像引き倒しだ。当時、銅像にロープをかけたアリ・ファリス(20歳=03年当時)。銅像の前でイラク国旗を掲げて叫んでいたのがムハマド・カズン(36歳=同)。
そして、ハンマーを使って銅像の台座を叩いていたのが、理髪店経営者サファ・ハシム(27歳=同)だった。サファは当時、「自由を勝ち取った」と思ったという。しかしその後、米軍キャンプ内の理髪店で働いていた彼は、勤務終了後にマイクロバスで自宅に戻る途中、武装組織から襲撃される。


03年4月の米軍バグダッド制圧直前、アベド・アルカリム(23歳=同)は、車で移動中に米軍の空爆で負傷、右足を切断した。切断手術直後に病院で会った彼は「アメリカよ、何も言うな、近寄るな」と泣き叫んでいた。病院で出会った4カ月後、彼の自宅を訪ねると、杖をついて歩いていた。10年後の2013年3月、病院での写真を頼りに、彼の自宅を再度訪ねたが姿が無い。

91年の湾岸戦争直後、拾ったクラスター爆弾が爆発して右手を失ったアフメド・ヤシン(54歳=2013年撮影当時)。普段は障害者支援団体で働いている。2011年6月には娘婿が宗派抗争に巻き込まれて射殺された。アフマド・ヤシンの孫にあたるシャハッド(2歳)は、今もヤシンを「お父さん」と呼んでいる。

車いすテニスプレイヤーの女性ザイナブ(24歳=同)は、週3日バグダッド大学のコートで練習に励んでいる。これまで数々の大会タイトルを獲得した。彼女の両足は膝から下が義足だ。06年12月、彼女の自宅周辺に米軍の砲弾が次々と着弾。彼女の姉と義姉も含め3人が死亡した。民兵組織が米軍キャンプを襲撃し、その応戦で放った米軍の砲弾だった。